セールスフォースCEO・マーク・ベニオフ氏に見る経営者のソーシャル利用

2012年のソーシャル動向の一つに、私は「個人の時代の到来」を挙げている。

専門職やフリーランサーなど個人名で仕事をしている人だけでなく、

組織、企業の一員でありながらも、ソーシャルメディアを通じて「個人」としての存在感を強めていく人が増える。

特に、経営者。

これからは、経営者がソーシャルメディアを使って発信し、パーソナリティを出し、

「個人」として自己表現をしていく時代になるだろう。

ここ最近の、セールスフォース・ドットコムCEO・マーク・ベニオフ氏のソーシャルでの存在感(ソーシャルプレゼンス)を見るにつけ、

そう確信せざるを得ない。

 

セールスフォースは、世界で10万社が導入するクラウド型サービスを提供する、今最も注目を浴びる企業の一つだ。

創始者でありCEOであるベニオフ氏を数年前からウォッチしているが、

ここ最近明らかに、企業としてだけでなく、ベニオフ氏個人としてもソーシャルメディアを活用している。

たとえば、これはベニオフ氏のFacebookタイムライン

カバー写真は、各地で開催されているセールスフォースのイベントの一風景と思われる。

たくさんの聴衆の前に立つベニオフ氏が見える。

フィード購読者は36000人。経営者としては、かなり多いほうだ。

投稿は毎日ではないが、投稿できる時はまとめて(連続投稿)する、というスタイル。

投稿内容は様々だ。

・自社のニュースやイベント紹介
・自分のメディア露出紹介
・ソーシャルやアプリ系ニュースの紹介
・顧客事例の動画
・個人的なお気に入りの曲(動画)
・旅先の写真

基本は会社の顔としての発信。そしてそこにパーソナルな投稿を織り交ぜているというスタンスのようだ。

会社の宣伝だけでなく、個人的な好みやセレクションを含むところがポイントだ。また、YouTube動画を活用しているのも氏の特徴。

Facebookのほか、Twitter(フォロワー26000人)、Google+(フォロワー13000人)にも同様の記事を投稿。

この3つを合わせただけでものべ75000人。「個人メディア」として十分な聴衆である。


Google+では、スーツではなくセーター姿の写真を採用

個人ブランドを持つ企業トップと言えば、なんと言ってもアップルの故スティーブ・ジョブズだが、

TwitterもFacebookもやらなかったジョブズはソーシャルでのプレゼンスはほぼゼロだった。

ソーシャル活用では、日本ではソフトバンクの孫正義氏が有名だが、孫氏はTwitterだけでFacebookは使っていない。

そう考えると、世界を見回しても、

ソーシャルメディアで広くプレゼンスを作っている経営者というのは、

ソーシャル系サービスのテック起業家を別とすれば、

私の知る限りベニオフ氏がナンバーワンだ。

明らかにベニオフ氏は「主要ソーシャルメディアで継続的に投稿する」戦略を取っていると思われる。

 

では、経営者が忙しい合間に、手間と時間をかけて、ソーシャルメディアに投稿をしていくことに意味はあるのだろうか。

私は大いにあると思う。

 

ソーシャルメディアを活用したい、という企業がどんどん増えている。

Facebookページを作る企業も去年と比べて激増した。

しかし、Facebookページを作ったものの思ったより反応がない、という声は後を絶たない。

その理由の一つは、「プレゼンスがないのにいきなりページを作る」からだと私は見ている。

ソーシャルメディア、特にFacebookを「コミュニティ」と考えるとその理由はよくわかる。

コミュニティの集会で、誰も知らない、顔も名前も見たことのない人が、いきなり来て店を広げたところで、

誰にも関心を持たれない。

「自分とは関係ない」と見なされるからだ。

しかし、よく顔を出す人、存在感のある人、名前を聞いたことのある人が店を広げれば、

ああ、あの人の店、ということで人が集まる。

 

誰でもが知っているブランド企業は別だが、

そうでない企業が、多くの人に関心を持ってもらうには、

いかに「あの人の会社」という状態を作れるか、が一つのキーポイントになる。

検索のような「モノ軸」ではなく知り合いベースの「ヒト軸」であるソーシャルメディアでは、

会社の顔となる「ヒト」の認知を上げていくのが一番早いのだ。

 

このまま続ければベニオフ氏のソーシャルでの存在感はどんどん大きくなり、

ソーシャルでベニオフ氏を知り、そこからセールスフォースを知った、というユーザーも今後どんどん増えていくだろう。

経営者のソーシャルプレゼンスが売上に直結する時代になっていくかもしれない。

もちろん、経営者が発信をすることはリスクも伴うし、

ある程度のスキルも必要になるし、性格の向き不向きも確かにあるだろう。

しかし、

ソーシャルメディアが普及し、「個人」にスポットが当たる時代には、

声を出さない経営者より、声を出す経営者のほうが、

より共感をもたれる。

これは間違いないのである。