楽天がPinterestに出資する効果を考える(三木谷氏インタビューから)

スタートアップバブルに沸き立つシリコンバレーで、最有望株Pinterestへの出資という「誰もがうらやむ」ポジションを、楽天が取った。

それも単なる出資ではなく、Pinterestが目指す「Eコマースをからめたビジネスモデル」をサポートする立場としてだ。

三木谷氏自身「この出資の意味合いは大きい」と言っている通り、今後のソーシャルサービス、EC市場、そしてインターネット全体へ影響を与えかねない大きな出来事といえる。

そもそも、なぜそれほどまでにPinterestが評価を受けているのだろうか。

最も注目される点は、Pinterestは写真コンテンツを通じて、ユーザーの楽しい経験を損なわず自然な形でEコマースとつながれるから、ということだろう。

ソーシャルメディアは無料が基本だけに、どのサービスもマネタイズに苦労している。そんな中、ECサイトの商品写真がユーザー自身の手によってピックアップされ、バイラルしていくPinterestに注目が集まるのは当然だろう。

Pinterestがこれから作ろうとしているビジネスモデルは世界中が注目している。そしてそのサポート役に選ばれたのが楽天というわけなのだ。

では、なぜ楽天なのだろか。

5月18日の日経ビジネス、三木谷氏インタビュー「楽天はなぜピンタレストに出資したか」の記事から、三木谷氏の言葉を読み解いてきたい。

●楽天が出資できた3つの理由

今回、Pinterestが楽天を出資者として選んだ理由は3つ。

1)Pinterestは楽天のECノウハウを欲しがっている

“まず、ピンタレストが今後のビジネスモデルを考えていく上で、EC(電子商取引)は重要なポイントだったということ。その際に楽天のノウハウを使いたかったんでしょう。”

Pinterestはかつてテスト的に、ECサイトからの写真にアフィリエイトリンクを貼ったことがあった。一見わからないやり方を使ったため批判を浴びて取り下げた。Pinterestが作ろうとしているモデルがアフィリエイトなのかどうかはまだ不明が、やはりユーザーがECサイトの商品ページにダイレクトに着地する、というPinterestの構造を考えると、Pinterest経由で成約したECサイトからコミッションをもらうというモデルはわかりやすい。

2)中国市場をあきらめ、シリコンバレーの関心が日本市場にシフトしている

“もう1つは日本市場の重要性がシリコンバレーの中で上がっているということです。中国はフェイスブックが未だ入れないのを見て分かるように、相当難しいという風潮が流れている。代わりに急浮上しているのが日本市場です。日本のインターネットユーザーの75%を押さえている楽天ですから、彼らにとって我々と組む意味合いは大きかったでしょう。特にピンタレストは写真を軸に交流するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。日本人は世界的に見ても無類の写真好きですから。日本市場の開拓は重要だった。”

「中国は市場としても、パートナーとしても難しい」という言葉は、5月に参加したソーシャルメディアのカンファレンスで会ったNYの代理店役員が言っていた。Facebookそっくり、Twitterそっくりの独自のソーシャルメディアを作ってしまう中国に、米国発ソーシャルメディアの普及はほぼ絶望的。Facebookもまたこの3月に、米国以外で初めてマーケティングカンファレンスを日本で行った。日本はソーシャルサービスの有望マーケットとして期待をされているのは間違いない。

3)Pinterestは楽天からマネジメントも学ぼうとしている

“3つ目はゼロからここまで大きくなった楽天のマネジメントノウハウを教えてほしいということです。”

この言葉は非常に興味深い。なぜなら急成長した企業はほかにもたくさんある。GoogleしかりFacebookしかりアマゾンしかり。しかし日本の楽天に注目しマネジメントを学びたいということは、Pinterestは楽天のような「総合ショッピングモール」、あるいはその要素を取り入れた何かを目指そうとしているというふうにも受け取れる。このあたりは今後の動きに要注目である。

●日本語版について

“日本語版の提供については今度向こうに行ったときに話し合って決めようと思っています。”

待ち望んでいた日本語化はいよいよ現実のものとなる。言語だけでなく、現在PCサイトでは写真に貼る価格の通貨はドルとユーロのみとなっているが、これを円に対応するのは間違いないだろう。

●価格競争からの脱却「ディスカバリーショッピング」

”今、世の中は「ディスカバリーショッピング」の時代に入っています。つまり発見する喜びを感じながらショッピングを楽しむということです。僕が楽天市場で進めてきたことでもあります。これは価格競争からの脱却を意味します。”

三木谷氏の口から出た、今後重要となるキーワード「ディスカバリーショッピング」。

製品名を検索して、最安の店を探せる、というのがインターネットショッピングの便利さだが、これが厳しい価格競争を生むこととなった。しかし、今後主流となるディスカバリーショッピングは、価格競争に苦しんでいたECサイトの救いに神となるかもしれない。ウィンドウショッピングのように、「これこれ、こんなのが欲しかった」「わあ、これ素敵、欲しい!」という、「価格は二の次」層にリーチできうるからだ。

もうすでに、FancyやFab,Etsy,そして楽天が出資しているAhalifeなど、一点物や手作り品、キュレーターのセレクトによるこだわり品を集めたサイトがユーザーを集めている。Pinterestはそれらこだわりの商品を集めたカタログのような位置づけになる。

”インターネットで売れなかったものが、「インターネットの方が売れる」時代になる”

これまでニーズ商材が強かったインターネットショッピングが、ついにウォンツ商材が売れていく時代が到来するということだろう。そういう意味で、ウォンツ商材の代表格であるアパレルに大きな可能性がある。

”各社ともにアパレルECに力を注いでいます。アパレル関連商品もピンタレストと相性がいい。楽天は今、ファッションブランドをどんどん集めています。女性向けブランドはほぼすべてジョインすると見ています”

●画像+インタレストグラフによる売上増の期待

”興味や関心が同じグループの中で「これ買った」「これいいよ!」と言い合うのは影響力が全然違う。コンバージョンレート(成約率)が数倍変わってきます”

Facebookのような人間関係の中での「これいいよ!」より、Pinterestのような興味関心が合致するグループでの「これいいよ!」は数倍の成約率の差がある、と三木谷氏は言っている。「売上に結びつく」ソーシャルサービスとして、この点においても大きな期待が持てる。

●楽天IDとPinterestとアカウントが直につながる

”日本ではまだフェイスブックがそこまで普及していません。なので、まずは楽天IDとピンタレストの連携を図り、利用者間がつながっていくようにしていきます。当然、そこにはフェイスブックでログインしたユーザーもいれば、ツイッターでログインしたユーザーもいるでしょう。それでいいんです”

楽天とPinterestの連携を、一般的に行われているFacebookログインを通してではなく直接行う、ということのようだ。具体的にどういう形なのかは不明だが、今年中に発表されると言われているPinterestのAPIを利用するということも考えられる。

●EC市場全体が伸びていく

”今後、こうした流れの中でEC市場はさらに伸びる。うちも伸びるし、アマゾンも伸びる(笑)”

Pinterestを代表とする画像キュレーションサイト、ディスカバリーショッピングの広がりにより、これまでネットで売れなかった物までが売れていき、EC市場全体が伸びると三木谷氏は言う。

「インターネットは価格競争だから儲からない」「うちの商品はインターネットには向かない」とあきらめていた方にとって、この流れは朗報であるはずだ。

Pinterestの登場によって、EC市場も次の世代に入ったのである。

圧倒的な力を持つFacebookですらも、Eコマース(Fコマース)についてはまだまだこれからというところ。Pinterestがこの分野で先を越す可能性は大いにあると私は見ている。