ソーシャルメディア時代に生きる私たちに大事なこと〜『媚びない人生』書評

ジョン・キム氏の新刊『媚びない人生』には、ソーシャルメディアが普及し「評価経済社会」と言われるこの時代において、今後私たちが直面するであろう問題への回答となることが多く書かれている。

この本は、慶応義塾大学准教授である筆者のメディア・コミュニケーション研究所内ゼミ、通称「キムゼミ」の卒業生への贈る言葉を本にしたものである。

社会に巣立つ学生へのエールではあるが、たとえ社会人何年生であっても、自分の生き方を考え直したい人にとってキム氏のメッセージは強く刺さるだろう。

「媚びない」

タイトルのこの言葉に私はまず、ぐさりときたのだ。

なぜなら、自分自身「媚びている」と思える瞬間が多々あるからである。

ソーシャルメディアで発信をし、いいね!をもらい、コメントをもらい、ということが日常に組み入れられていると、多くの人と考えや経験を共有する楽しさを味わう反面、過剰に他者を意識する自分に気づくことがある。

ウケることを言おうとする、共感されやすいことをしようとする。

行動や言動の価値基準がいつのまにか自分ではなく他者となり、

芸と言える芸はないままに、思考回路が芸人のそれとなり、

共感、共有する楽しさに麻痺状態になっている自分にはっと気がつき、

実はこれは人に「媚びて」いるのではないかと逡巡したことは一度や二度ではない。

そしてこのような生活を続けてきて、果たして自分に成長があったのかどうか、はなはだ心元ないのである。

「そもそも他者の評価はそれほど優れたものなのだろうか。バッハやゴッホなどの優れた芸術家たちも、彼らが生きている間にはほとんど評価されなかった。他者の評価とは、その程度のものでしかないのだ」

「実際、他者の評価を意識するようになると、他者から評価されるための言動をするようになっていく。短期的にはそれは評価につながるかもしれないが、長期的にそれは相手に合わせた自分を作ってしまうことに他ならない。それは、自分らしい人生を送りたいと考え、成長させようとしている自分には、実はネガティブなものとなる。評価は自分でこそ、すべきなのだ

(第四章「他者と向き合う 〜絶対不可侵領域を持った自己を育てる」より)

自分を信じる力をつけるためには、他者の目を排除することが重要であり、

「8割、社会や他者、家族などの外に向いているアテンションを、自分に向ける」ことで、他者や外の環境に振り回されない確固たる自分の核を作るのだとキム氏は言う。

自分を信じ、自立し、媚びずに生きる〜慶応義塾の創立者・福沢諭吉が150年前に掲げた「独立自尊」に通じる精神が、新進気鋭のメディア学者であるキム氏の言葉で語られる。

それは決して古びることなく、むしろ多種多様な生き方ができる今だからこそ必要とされると感じる。

本などを書き、少しばかりネットで影響力を持ったからといって、勘違いしそうになっていた自分自身が本当に恥ずかしい。

大事なのはいいね!をもらうことではない。人に評価されることではない。

自分が残りの人生で何をなすべきなのか、何を貫くのか、何を次の世代に伝えたいのか。

自分自身と向き合って答えを出し、行動せよ。ぶれるな、と自分を叱るのである。