「NAVERまとめ」は第二のWikipediaになるかもしれない

ニールセンが発表したインターネット視聴率データ「Nielsen NetView」によると、
NHN Japanが提供するサイト「NAVER まとめ」の月間訪問者数が1,300万人を突破した。
http://www.netratings.co.jp/news_release/2013/02/news20130225.html


出典

前年比2.3倍、「伸び率」という点では、Facebookをはるかに上回り、訪問者数ではTwitterすらも抜くという大躍進となっている。

また、訪問者だけでなく、注目すべきは、このサイト(正確に言うとサイト内の個別人気記事)が検索に大きく評価を受けている点。検索(Yahoo!とGoogle)経由で記事に流入するユーザーが71%となっている。

実際に、何か固有名詞を調べようとして検索すると、必ずトップに来るWikipediaのすぐ下にNAVERまとめの記事を見つけることが最近多くなった。

NAVERまとめは、大きな潜在力を持っているWebサービスであり、個人的には、日本においてWikipediaの次に来る巨大サイトになっていく可能性もあるとみている。

なぜそう言えるのか。そしてそもそも「NAVERまとめ」とはどんなサイトなのか。
まだご存じない方のために、3つの視点でまとめてみた。

1,単なる「まとめサイト」ではなく「キュレーションプラットフォーム」
2,アフィリエイトに次ぐ新たな「Webから収益を得る」システム
3,検索とソーシャルの「隙間領域」


1,単なる「まとめサイト」ではなく「キュレーションプラットフォーム」

まとめサイトというと、Twitterのまとめ「Togetter」や2ちゃんねるのまとめ「ハムスター速報」といったサイトをイメージする人も多いと思うが、NAVERまとめは、そういった特定のサイトでの出来事をまとめたものではなく、もっと広域かつ高度なまとめスキルを要求されるものだ。

近年、ネット上にはき出される情報量が爆発的に増えた結果、Webユーザーは情報をとても消化しきれず、「大事なところだけ教えてほしい」という切実なニーズが高まり、それが背景となり「キュレーション(インターネット上の情報を収集し、情報を分類し、つなぎ合わせて新しい価値を持たせて共有すること)」を行う「キュレーター」の価値が高まっている。NAVERまとめはそのニーズをうまくとらえたユーザー生成型のメディアと言える。
まとめ作成者(キュレーター)が、「あるテーマ」に沿って、その人のセンスと知見と文脈で、Webの海からピックアップした情報を集めて見やすく整理して共有する。

たとえばこのまとめ。
「カラダの不調を一瞬で治すスゴ技10選」

まとめ作成者は、肩こり、視力低下、鼻づまり、しゃっくりなどの「身体の不調」というテーマにおいて「一瞬で治す技」という文脈でWebから探してきてこの記事をまとめた。YouTubeの動画やサイトの引用、写真などコンテンツの形態は様々。上記のような症状に悩む人にとっては、一つ一つ検索して調べる手間を省いてくれて、「この記事だけ見ればいい」ので助かる。つまり、自分にとって価値を持つ情報ソースとなる。

ユーザーが価値を認めた記事は、すぐに結果となって現れる。
この記事も、わずか1週間前にアップされたのにもかかわらず、すでにビュー数は17000を超え、4335人に「お気に入り」として保存されている。

まとめを作ったのはbriannu6zさん。これまで6つのまとめを作っている方のようで、匿名なのでどんな人かは不明だ。しかし閲覧者にとっては、あくまで「そのまとめが自分にとって価値があるかどうか」が問題なので、まとめ作成者が実名とか匿名とか、誰なのかなどはほとんど気にする人はいない。

まとめのテーマは、それこそありとあらゆるもので、サイトトップにこそカテゴリは分かれているものの、実際は検索ニーズと同じだけあると考えていい。

2,アフィリエイトに次ぐ新たな「Webから収益を得る」システム
まとめを作るのは、簡単なように見えて、実は大変だ。いいまとめを作ろうとすればするほど、調べるのに時間がかかり、まとめの順番や文脈づくり、ユーザーに探してもらうためのタイトル、効果的なサブタイトルなども考慮しなければならないからだ。

私の会社はソーシャルメディア担当者の養成講座を運営している。今後「キュレーション力」はユーザーやファンのために情報を提供する担当者にとって必須のスキルとして位置づけており、「NAVERまとめを作る」ことを講座の課題の一つにしている。受講生は毎回、「まとめがこんなに大変だったとは」と四苦八苦している。

では、まとめ作成者はいったい何のために大変な思いをしてまとめを作るのか。
自分のまとめがたくさんの人に役立つことが単純にうれしい、という充足感ももちろんあると思うが、もちろんそれだけではなく、実利もある。このサイトでは収益面でも作成者のモチベーションを維持する制度が用意されているのだ。

「まとめインセンティブプログラムとは」

ここでは、アクセス数(支持数)をもとにまとめ作成者にインセンティブが支払われる。
さらに「中長期のヒットを生み出す人」「長期のアクセスを集める人(=一般検索からアクセスを集められる人)」は高いレートで収益を得ることができるシステムになっている。つまり、「目の付け所、センスがいい」、「ユーザーのニーズに応えられる」腕のいいキュレーターを大事にしているのだ。

このまとめで、作成者はどれぐらいの収益を得ることができるのか。もっと言えば、これで「暮らしていける」レベルになれるのか。残念ながら、1年ぐらい前のブログ記事や中の人の記事はあるのだが、そのあたりは私では調べきれなかった。(もし知っている方がいたらコメントでお願いします)

3,検索とソーシャルの「隙間領域」
NAVERまとめを見ていて思うのは、ここは検索でもソーシャルメディア(たとえばTwitterやFacebook)でも出て来ない「まとめることによって意味づけされる情報」の宝庫だということ。

前述の講座の受講生に、お気に入りのまとめを選んでもらったら、ある受講生は「もうすぐつながる! 東横線・副都心線直通ダイヤのポイントは?」を選んだ。理由を聞くと、「自分は東横沿線に住んでいて、もうすぐ副都心線とつながるということは知っているのだけど、ニュースを見ても公式サイトを見ても、それで自分の通勤がどうなるか、どう変わるかまではわからなかった。でもこれを見たら、『ピーク時には横浜〜渋谷間の所要時間が約2分短縮される』とか、自分にとってどう関係するのか教えてくれて、助かった」とのこと。単に情報をまとめるだけでなく「それでどうなる」ところまでまとめた記事、つまり情報の意味づけを加えた記事が人気を集める。

それは当然、検索結果となって現れる。
たとえばこの記事は、「東横線 副都心線」のキーワードで検索すると、Yahoo!において公式サイトやニュースなどの次に位置する6位となっている。
さらに、この情報に満足したユーザーは、友達に教えてあげようとFacebookやTwitterでシェアをする。優れたまとめ記事は、検索やソーシャルと競合するものでなく、両者の隙間を埋めるものであり、両者とも相性がいいのである。

また、まとめは、潜在的検索ニーズを拾い上げるものでもある。
たとえば、「彼女が来ても恥ずかしくない男の部屋づくり」などの記事は、自分で積極的に探すようなものではないが、「そうそう、こういう情報知りたかった」という潜在的な知りたいニーズを満たすものであり、思わずクリックしてしまう男性も多いだろう。
どちらかというと雑誌に近い感覚の、でももっとニッチな、Webユーザーの細かい潜在ニーズに答えるサイトと言えるかもしれない。

ネガティブな面としては、「「まとめサイト」ブームのお陰で訪問者がTwitterを抜く」の記事で、かの山本一郎氏も指摘している通り、

「手軽な小遣い稼ぎ目的でデタラメな情報をまき散らすまとめサイト・記事ばかりが横行してしまう状況も歓迎しかねるものがあります。」という点があろうかと思う。

でも私はそこは心配はしていない。NAVERまとめの構造は、市場原理が働き、ユーザーの支持を得られない記事は消えていく仕組みとなっているからだ。

ユーザーに求められる記事は当然Googleにも評価され、上位にランクされる。

そういう意味で、NAVERまとめの質を担保しているのは、Webユーザーであり、Googleなのである。