米国で見た、ソーシャルメディア企業活用の主流「コミュニティ」とは何か

3月11日から米国サンノゼで行われている、オンラインマーケティングの大規模セミナー「SMX West」に来ている。

目的は、今回初開催となるワークショップ「コミュニティマネジメント・マスタークラス(Community Management Master Class)」に参加するためだ。

「コミュニティ」はいま、検索マーケターの間でも大きなテーマになりつつあるのである。

2010年6月、私は当イベントに初めて参加し、そこでソーシャルメディアを学び、この世界に入るきっかけをつかんだ。

私自身の転機となった思い出のイベントでもある。

3年たった今、会場を見渡すと、何かが違う。

前に感じた重々しさがなく、むしろやわらかくて、軽いのだ。

なぜだろう。

理由はすぐにわかった。会場にいる女性の割合が激増している。

3年前は「SEO」と「検索広告」が中心。

ジャケットを着たお金周りのよさそうな、男性の「サーチマーケター」「広告マン」「コンサルタント」ばかりで、女性はまばら。

ところが今回は若くてカジュアルな20代から私ぐらいの落ち着いた年代まで、まあ女性の多いこと多いこと。

これまで男性の世界だったSEOやPPCに、女性がプロが増えてきたというデータが先日発表された。

今日の様子を見たらそれがリアルなデータであることがわかる。セッションスピーカーも、前列に座っている人も、質問者も女性、という姿があちこちで見うけられた。

ソーシャルメディアの普及により、女性のコンサルタントや経営者が増え、

加えて「コンテンツ」が重視され女性が在宅でもできるコピーライターの活躍の場が広がった。

さらに、3年前にはほとんどいなかった「コミュニティマネージャー」の出現である。

「コミュニティマネージャー」とは、企業コミュニティ(その企業の発信していることに興味を持って集まってきてる人のこと)を運営する人のことで、多くは、ソーシャルメディアの担当者のことを意味している。

今日は、たまたま隣に座っていたあるコミュニティマネージャーにインタビューすることができた。

隣の人のPC画面を見たら、「SEO MOZ」(SEOツールを提供している会社)のTwitterアカウントを操作している。

「もしかして、SEOMOZのコミュニティマネージャーですか?」と話しかけてみたら、

「はい、そうです」との答え。

SEOMOZという会社はイメージキャラクターを使ったり、無料コンテンツが充実しているなど、親しみやすく親切なイメージで好感を持つ人が多い。私も常々興味を持っている会社だった。

「それはよかった。ちょっとインタビューしてもいいですか?」と聞くと、二つ返事でOKしてくれた。

彼女の名前はジェン。小さなお子さんがいるママだ。

名刺を見ると、肩書きが正真正銘「Community Manager」。

SEOMOZは110人の会社だが、「コミュニティ」を社内でも非常に重視していて、

4つの役職と、サブ的な仕事合わせるとなんと12人のチームで動いているという。

1,オンサイト担当(自社サイトコミュニティ。ブログ、Q&Aなど)
2,ソーシャル担当(Twitter、Facebook、Google+、Pinterest、LinledIn)
3,コミュニティスペシャリスト(1と2の統括)
4,コミュニティマネージャー(全体統括)

グローバル企業のため、上記以外では在宅パートタイマーのシフトを組み、24時間体制で回しているそうだ。

彼らにとっての「コミュニティ」は、メンバーは必ずしも「お客さん」であるとは限らない。

お客さんの場合もあるし、そうでない人もいる。その区別は特にしていない。

ソーシャルメディアなので出入りも激しいし、特に「リスト化」などをしているわけではない。単に自然に接するだけだそうだ。

コミュニティチームの目的はただ一つ。自社サイトやソーシャルアカウントに、興味を持ってきてくれている人たちに、「ハッピーになってもらうこと」だという。

そのために、彼女たちはコメントを返したり、質問に答えたりして全力を尽くす。

自社の運営するカフェに来てくれた人を気持ちよくオープンに迎えて、気持ちよく帰ってもらうスタッフのようなものだろうか。

「見込み客として、何か営業的なアプローチするのか」という私の問いに、

「それは特にしていない」とジェンは答えた。

「ただ、カスタマーリレーションチームとは密接にかかわっています。たとえば、新しくお客さんになったばかりの方は、ログインのしかたがわからなかったりすると、コールセンターではなくTwitterに連絡してきます。その場合は、私たちが返事できることは返すし、そうでない場合はカスタマーリレーションチームに渡します」

会社から求められるKPIについても、その目的に合っており、聞いて納得するものだった。

最後に今回、このカンファレンスに参加する目的は?と聞いてみた。

「コミュニティの人とリアルで会って、会話するためです」と意外な答えが返ってきた。

「私たちのところに集まってくるのはマーケターなので、このカンファレンスにもたくさん来ています。Twitterなどを通じて、私がここに来ていることを伝えてあります。するとみんな、会いに来てくれるんです。SEOMOZは、展示会にブースを出していないので、私たちがブース代わりなんです」

なるほど、と頷いた。

コストをかけてブースを出して新規客を集める、というのがこれまでの企業のやり方だ。それはそれで有効だろう。

しかし、日々の活動によってコミュニティができているのなら、必ずしもブースは必要ない。たくさんいるメンバーに自分がいる場所を知らせて「会いにきてもらう」だけ。ブースで待ち構えてその間何もできずにいるより、その間、彼女たちもセッションを受けられて、合間に仕事もできる。実に合理的だ。

オンラインでのつながりがオフラインでもつながり、関係が強くなる。

コミュニティ運営によって、その流れを自然に作れるのだとしたら、企業にとってその価値は大きいだろう。ジェンは言葉の端々で、コミュニティのことを「アセット(資産)」と表現していた。

セッションのあと、パーティでまたジェンを見かけた。

話をしていると、確かに彼女の言う通り、ジェンを見つけていろんな人が話しかけてくるのに驚く。

ある青年は「ジェン、会いたかったんだ。この前のYouTubeはよかった」。

聞くとジェンはときどき、「ホワイトボードフライデー」というWebセミナーの動画番組までやっているのだという。

青年の顔は「会いたい人に会えた」という喜びで満ちていた。

「自社のコミュニティに集まってくる人をハッピーにする」

シンプルだけど、やはりこれが原点なのだと思った。