ちょっと待った!「YouTubeの動画広告レート急落」は本当なのか?

最近何かと話題のYouTuber(ユーチューバー)。

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YouTubeにおけるコンテンツ作成者である投稿者にGoogleの広告収入が分配されるもので、それを専業にする人も現れた。

ニュースに取り上げられることも多いが、新しい概念だけに「ちょっと待った!」という誤解がしばしばあるのだ。

たとえばつい先日のこの記事。

「動画広告レートが急に落ち込む 収入「激減」にユーチューバー嘆く」(J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2015/01/09224990.html?p=all

記事を要約すると、

あるYouTuberが「昨年暮れから広告収入が激減している」と嘆いている、ということから始まり、

・「トップクラスは企業のタイアップをとるが、普通のYouTuberはそうではない」
・「勝ち組負け組に分かれてきている」

など、ほかのニュースからの情報を加え、さらにこれを受けてITライターの方にコメントをもらっている。

「これからはサイトに登録したユーザーを放さないために、人気の高いユーチューバーだけを選別、優遇するかもしれない」

そして最後は、

「今後、同じような内容でもプロが制作し、有名芸能人が演じるようにでもなれば、歴然としたクオリティーの差が出てしまう。それでも生き残れるとしたら、その時は「セミプロ」のユーチューバーとしてではなく、プロの映像クリエイターとして配信を続けているかもしれない。」
とまとめている。

この記事がJ-CASTニュースの「経済」カテゴリで扱われており、ライブドアニュースにも配信されソーシャルメディアで影響力のある方たちも何人か取り上げコメントしていた。

この記事、一見、取材をして論説を加えたちゃんとしているように見えるが、実はかなり「ズレ」ている。

まず記事の発端となった「嘆いているYouTuber」のソースが、この動画だということ。

「Youtuberの収益が激減!?理由はテレビCMのせい!?」

動画配信者でプロレスラーでもあるシバター氏は、炎上動画で有名だ。

「悪役レスラー」の役回りをYouTubeでも行っていて、HIKAKIN氏などトップYouTuberを仮想敵にし、毎回ボコボコに批判することで再生数を稼いできた。

あまりに過激なので一度チャンネルを削除されたが、懲りずに新しいチャンネルを開設し、わずか1年ちょっとで17万人以上の登録者を得ている強者(つわもの)だ。

私はシバター氏と面識があるが、素のシバター氏は動画で見る憎たらしさは全くない。たしかに過激だが言っていることは面白いし、YouTubeのことをこれだけ知り尽くしている人もそういないと思う。

ただ当然ながらアンチも多く、チャンネルの評価基準の一つとなる「低評価」は相当数となる。

彼はお金を稼ぐため、何がYouTubeで受けるか、再生が上がるかを研究しており、受けるテーマを選んで毎日動画をアップしている。

今回の動画のテーマ「YouTubeの収益」は彼の鉄板ネタの一つであり、稼いでいるトップYouTuberをやり玉に挙げやすい美味しいコンテンツなのである。

J-CASTの記事のニュースソースは、ネットニュースという性質上、シバター氏にインタビューしたとは考えにくいので、この動画が一次ソースではないかと思う。

だが、あのシバターのネタ動画を情報ソースにして「動画広告レートが急に落ち込む」と言い切って経済ニュースとして出してしまっていいのだろうか。

確かにシバター氏の広告収入がぐっと減ったというのは事実なのだと思う。

しかしそれは、

①低評価やクレームが多いシバター氏に特有の現象かもしれない

②広告換算の料率は一定ではなく年間を通して変動するので、12月は低い時期だったかもしれない

という可能性もある。

まわりのYouTuberに聞いてみると、同じ現象を訴える人、変わらない人、それぞれだ。

私自身の収入(ほんのわずかだけれど)も見てみると料率はほとんど変わらなかった。

これを記事にするならITライターに聞くより、シバター本人はじめ複数の現役YouTuberに聞くべきところではないだろうか。

さらに、ITライターの方の「これからはサイトに登録したユーザーを放さないために、人気の高いユーチューバーだけを選別、優遇するかもしれない」というコメントは全く意味不明。

「サイトに登録したユーザー」って?

YouTubeの登録者というのはYouTubeというサイトではなく各チャンネルに登録する、という仕組みをわかっているのだろうか。

最後のくだり、
「今後、同じような内容でもプロが制作し、有名芸能人が演じるようにでもなれば、歴然としたクオリティーの差が出てしまう。それでも生き残れるとしたら、その時は「セミプロ」のユーチューバーとしてではなく、プロの映像クリエイターとして配信を続けているかもしれない。」については、

「違うよ!」と声を大にして言いたい。

これはよくあるYouTubeの誤解なのだ。

YouTuberは動画制作という意味ではほとんどが素人レベルだ。でもだからといって芸能人や「プロの映像」が入れば成功するわけではない。テレビとは別物で、違う進化をとげているものだ。

それが証拠に過去、芸能人やお笑い芸人やテレビプロデューサーを投入して大失敗をしたプロジェクトがたくさんある。

そしてYouTubeは、映像クオリティが高ければ再生数が上がるわけでもない。「ネタ」がすべてなのだ。

面白ければスマホで撮った画質が悪いものでも何十万再生となり、

そしてそれを常々言って実践しているのが、皮肉なことに前述のシバター氏だったりするのである。

そこがYouTubeの難しいところでもあり、
だからこそ個人にとっても、広告主である企業にとっても可能性に満ちているのだ。

2015年は、もっとYouTubeに対して世の中の理解が高まって、このようなミスリードの記事がなくなってほしいと思う。