自分がテイスティングが苦手だと気づいたのは、2年前、ワインエキスパート試験の二次試験の準備をしているときだった。香りがとれない。味の区別がつかない。思ったように点数がとれず、自分のテイスティング力が劣っていることに気づいたのだ。

これは結構ショックだった。食べ歩きが好きで、自分で料理もするし、SNSにもそんな写真をよく上げていたので、人にも「食通」と思われていたからだ。

まずいことに、テイスティング力を上げる方法が全くわからなかった。本を読んでみてもいまひとつ。自分がどこでつまづいているのかもわからなかった。最後は「まあ、何とかなるだろう」と半ば投げやりで二次試験に挑み、案の定失敗した。

ショックだった。一次試験はかなりいい点数を取ったのに。なんとかしたい。試験云々以前に、ちゃんとこのスキルを身につけたい。テイスティングを教えてくれるところはないだろうか。

そこで辿り着いたのが、ロンドンに本部のある「WSET」だった。青山にある「キャプランワインアカデミー」が日本語で講座を行っている。

WSETはワインの国際資格で、テイスティングについては「系統的テースティングアプローチ(SAT)という独自のメソッドを持っている。授業では毎回、理論とそれを裏付けるテイスティングを行う内容が自分にぴったりだと思い、「レベル3」の講座を受けることにした。ワインエキスパートの翌年の試験まで1年あるので、その間もっと勉強しようと。

WSETの授業は本当に勉強になった。これまでいかに「感覚的に」テイスティングをやっていたかがわかった。自分に足りなかったのは「理論的なアプローチ」だったのだ。

講座を通して、テイスティング力は格段に進化したが、それでも「これだ」という自信につながるまでにはいかなかった。

模擬テストではかなりいい成績をとっていたのだが、資格試験の本番で、考えすぎてまたもや不合格に。

再び落ち込む。自分はなぜこれほどテイスティングができないんだろう。自信がどんどんなくなっていった。

しかし不思議なことに、日本酒に関してはテイスティングはよくできていた。日本ソムリエ協会の「SAKE DIPLOMA」、WSETの「SAKEレベル3」も受験したのだが、両方ともテイスティングは得意で、一発合格だった。なぜワインだけがダメなんだろう。

しかし、長きに渡った苦しみの末、ようやく「開眼」するときがきた。

昨年10月。ワインエキスパートの2次試験が迫っていた。同日に「SAKE DIPLOMA」の2次試験もあり、両方の準備に追われていた。

試験前日。自宅でブラインドテイスティングしていた。シラー、カベルネソーヴィニオン、サンジョベーゼ、ピノ・ノワールの4種を用意して、テイスティンググラスの底部分にワイン名をシールで貼る。うちピノ・ノワールだけは他に比べて色が薄くすぐわかってしまうので、なるべく濃い色のものを選んだ。

シャッフルして、試験と同じように全くわからない状態にして、いざテイスティング。

結果、4つともテイスティングコメントも品種も正解。最後サンジョベーゼとカベルネで少し迷ったが、酸味の強さで区別することができた。

そして臨んだ2次試験。なんと、サンジョベーゼが出た。迷いなく、コメントも品種も正解をマーク。

結果、合格することができた。

そしてその後に受けたWSETの追試も、「Pass With Merit」、つまり「良の成績で合格することができた。

それ以来、まるでつまっていた管が開通したかのように、ワインの香りがとれるようになった。微妙な香りも感じられるようになり、今はテイスティングが楽しくてしょうがない。

少し時間はかかったけれど、劣等生でも、若くなくても、テイスティング力は向上させることができることを証明できたと思う。

そして今思えば、私はテスティング力が劣っていたのではなかった。もともとあったセンサーが、何かで覆い被さっていたような感覚がある。

あるいは「開発されていなかった」とも言えるのかもしれない。

私のような人は結構いると思う。でも私がそうだったように、自分でもそこに気づかない。それはとてももったいない話なのだ。

そして、なぜ日本酒ができてワインができなかったのか。その答えもまだ見つかっていない。

まだまだ解明されていない「テイスティング」の世界。今後は実証実験をしながらフカボリしていきたいと思う。